2012.1policy_sdp,tokyo



どうなる介護保険制度の見直し

政府与党の税・社会保障の一体改革の動向

 介護保険は地方分権の試金石と言われてきました。介護保険事業は自治事務であり、保険者である市町村が、地域住民の声を十分に尊重しながら保険料を徴収し、必要なサービスを提供する制度とされていますが、実態として自治体の独自性はあまり発揮されていません。現在、各自治体では、第5期介護保険事業計画について、素案や中間報告が示され、新たなサービスや介護保険料の値上げ等について、議会での審議、市民への意見の公募等が行われています。しかし、市民の介護保障に大きな影響を与えかねない生活援助の時間変更等は、介護サービスを受ける高齢者の生活を直撃するものです。

生活援助を60分から45分に変更

 訪問介護の生活援助について、現行の基準60分を45分に見直す「介護報酬改定に関する審議会報告」が、12月5日の社会保障審議会介護給付費分科会で了承されました。生活援助中心のサービスは現行基準で、「30分以上60分未満」(229単位)と「60分以上」(291単位)に区分されています。「介護事業経営実態調査」(2011年度)によれば、「生活援助」を含む訪問介護の利用は5割(生活援助のみ29.5%、身体・生活22.3%)を超え、「生活援助」の1回平均提供時間は約70分となっています。介護保険サービスが必要な高齢者にとって、清潔な環境の維持や食事の確保、服薬や買い物といった支援、訪問介護員とのコミュニケーションは、必要不可欠なサービスです。
 厚労省の狙いは、単純に介護給付費の抑制・削減にあると予測されます。45分への短縮についての根拠となるデーター(株式会社EBP「訪問サービスにおける提供体制に関する調査研究事業」)は、介護給付費分科会で一部が示されたのみですが、介護給付費分科会でも根拠とならないと強い指摘を受けています(資料の公表は厚労省に問い合わせたところ年度末)。もし2012年4月から45分への短縮が実行されることになれば現場の混乱は必至です。

要介護認定者数を3%削減へ

 12月20日に決定された「社会保障・税一体改革素案骨子(社会保障部分)」では、「介護予防・重度化予防」として、「要介護状態になる高齢者が減少し、自立した高齢者の社会参加が活発化する介護予防を推進」するとされていますが、これは、「社会保障・税一体改革成案」(6月30日政府・与党社会保障改革検討本部決定)で示された、「介護予防・重度化予防」「介護施設の重点化(在宅への移行)」1,800億円削減、要介護認定者数を「2025年に現行ベースより3%程度減少」の具体化です。この削減、については、社会保障審議会介護保険部会の報告(11月30日)でも「重度化予防・介護予防」として3%削減が厚労省から提起されています。今後も注意が必要です。
 社会保障審議会介護保険部会の報告で肯定的に評価できるものは、1号保険料の低所得者の保険料軽減強化で、現行の給付費に対する50%の会費負担に上乗せし、低所得者への配慮として所得以外に資産状況も踏まえ、保険料を軽減するというものです。しかし、財源が明らかになっていません。介護納付金の総報酬割導入は、具体化へ向けて着手されると推測されます。しかし、介護給付との結びつきが薄い2号被保険者への負担は、事業主や被保険者の合意をどのように得るのかという課題があります。
 介護職員処遇改善交付金については、介護給付費分科会と介護保険部会とも「介護報酬において対応」する方針が確認されましたが、その具体化もはっきりとしていません。12月21日に官房長官、財務大臣、厚労大臣の3者で介護報酬プラス1.2%と合意したと報道されていますが、介護職員処遇改善交付金と同等の評価を介護報酬で行う場合は、約2%とされていました。慢性的な人員不足による「過密労働」と「犠牲的低賃金」では、職員の高い離職率が今後も予測されます。「介護現場の崩壊」を招かないためにも、労働条件の改善につながる介護報酬の引き上げが不可欠です。

今後の利用者負担等の改悪の可能性

 今後、政府・与党内で検討される可能性としては、以下のものがあります。
【ケアマネジメント】ケアプランの作成費の自己負担の導入(月500円~1,000円)。
【一定以上所得者の利用者負担】利用料の1割負担の引き上げ(2割程度へ)。
【多床室の給付範囲】入所者にも一定の室料負担を求める。
【補足給付における資産等の勘案】今後、実務的な検討を早急に開始する。
【介護施設の重点化】軽度(要介護1・2)の施設利用者の在宅との差額分について自己負担。
以上、介護保険制度の見直しの動向です。しかし、介篠保険制度の見直しは、閣議決定された「財政運営戦略」に記されたペイ・アズ・ユーゴー(pay as you go)原則に則って、必要な負担増に見合った財源を介護保険制度内で確保することを前提とされたため、昨年の介護保険部会では、給付の効率化・重点化や利用者負担の引き上げが検討される等財源の確保が大きな論点となりました。
 結果として、政府・与党内での反対意見等があり介護保険制度の見直しは、全体として大幅に縮小しました。しかし、今回議論は、保留扱いになったものについて「社会保障・税一体改革成案」によって蒸し返された形となっています。また、今回再度の見送りになっても2012年度以降に短期的に見直しが実施される可能性もあり得ることに注意が必要です。以下、二つの自治体の実情を報告して頂きました。

在宅療養支援診療所の大半が個人開業医……府中市の実情

murasakikeiji.jpg国は、今改定で、医療と介護の連携を重点施策として掲げています。一昨年の府中市の医療と介護は連携しているかとの事業者アンケートに対して、「はい」と回答した介護事業者は39%、医師は50%でした。市民の実感はさらに低いと思います。府中市内には、24時間往診に対応できる在宅療養支援診療所は12カ所ありますが、そのほとんどが個人開業医であり、高度介護者の要望に応えられていないのが現状です。一方で、2006年の小泉構造改革による療養病床の半減計画が現在も進んでおり、入院先も見つからない、往診する医師もいないという、生命に係わる事態が続出しています。
 府中市の第5期介護保険事業計画の策定にあたり、①訪問介護と訪問看護の連携による24時間対応の定期巡回・随時対応サービスの確実な創設、②市民からの相談に迅速に対応する「在宅医療支援窓口」の開設を、12月議会で一般質問しました。あわせて、療養病床削減計画の中止を求める全国的な取組みの強化が、火急の課題です(村崎市議記)。

独自事業の制度化を国に求める……世田谷区の実情

134361972148713220898_2012_06_21_032_retouch_01.jpg世田谷区においても、現在、第5期高齢者福祉計画・介護保険事業計画の策定に向けて作業が進められています。12月7日には、国の社会保障審議会介護給付費分科会の審議報告が示されました。今回の答申とこれまで世田谷区が進めてきた内容との関連および今後の課題について報告します。
1.区が進めてきた独自事業
①「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」=区では、平成21年度から日中随時訪問サービスを補助事業として実施してきた。介護保険の夜間対応型訪問介護の随時訪問サービスと合わせて、24時間対応サービスを実現するとともに、国に制度化を求めてきた。今回の答申では要介護度別、月単位の定額報酬を設定するとしている。
②通所介護事業の時間延長=区では、平成23年2月から、家族介護者の負担を軽減することを目的に、介護保険の通所介護サービスの終了後の夜間帯に高齢者トワイライト  モデル事業を実施してきた。同時に、国に通所介護のサービス提供時間の延長を提案してきた。今回の答申で、12時間までの延長加算が認められることとなった。
③有料老人ホームにおけるショートステイ事業に係る規制緩和=区では平成19年度から  有料老人ホームの空室を利用して行う、介護保険外のショートステイサービスを補助  事業として行っている。このことに対して介護保険事業化を求めてきたが、今回の答申では、特定施設入居者生活介護については、空室を活用した短期利用を可能にすることとされた。
2.今後の課題について
①介護予防では対象者を広げていく必要や、認知症予防では地域の仕組みづくりが欠かせない。在宅生活を支えるためには、福祉と医療の連携を促進していくことが必要であり、介護や看護等の必要なサービスを確立することである。3月条例改正に向けて議論を深めたい(羽田区議記)。