2012.10policy_sdp,tokyo



自治体の若者就労支援事業

求められる労働・政治運動の強化

 就職難が続き、フリーターやニートが増える中で、自治体での若者の就業支援事業が拡がってきています。まず、どのような事業が行われているか世田谷区の若者の就業支援事業を例にみてみます。

メンタルケアにも取り組む世田谷区

 せたがや若者サポートステーション(就労支援センター)」=厚生労働省の委託事業として開始。NPO法人が運営。卒業後、中退、離職など無業の15歳から39歳の方を対象として就労支援を行っています。初回の相談では状況や支援の仕組みを知ることから開始します。さらに個別相談では、将来や職業の希望など当事者に見合った仕事内容、セミナー、イベント・交流など就労の場につなぐための訓練、職場見学、仕事体験、就職セミナーへと進み、就職・進学・訓練などへつなぎます。
 中小企業・若者就労マッチング支援事業=産業振興公社の事業。今春学校を卒業する若年者等の就職活動をサポートするため、国の緊急雇用対策基金を活用し、中小企業者等と若年者とのマッチングを図り、就職につなげます(ただし、対象は区内在住・在学で、高校・大学を卒業または卒業が3年以内の未就学者に限定)。
若者むけ「就職活動中のメンタルケア」=産業振興公社の事業。今年6月から開始した事業。就職活動が順調に進まないことで心理的ストレスを抱えている若者を対象に、専門の心理カウンセラーがメンタルケアを行います。若者の自殺件数の増加の理由のひとつとして就職難があげられていることから、悩みや不安を聴く場をつくるためのものです。

PR不足など課題が山積

 各自治体でもほぼ同じような事業が展開されています。ハローワークと協力した地域での就職相談会、採用を予定している企業、求職者が一堂に会する合同面接会などが取り組まれています。人員不足が顕著だった福祉・介護・医療の分野では職業別の面接会も取り組まれ一定の成果をあげています。また、起業への支援事業も行われています。働く意欲がありながら思うような就職ができない若者を対象とする事業だけではなく、働く意欲に乏しい若者を対象として粘り強く寄り添いながら進む事業など就業支援は多岐にわたります。これらの事業はまだ十分に知られていないこと、足を運び、相談に来てもらうためのPRが不足しているなどまだまだ克服すべき課題をたくさんもっています。

2007年から国制度が本格的に展開

若者の離職理由トップ10.jpg国は、2003年(平成15年)、「若者自立・挑戦プラン」(3年間)を策定しました。「フリーターが約200万人、若年失業者・無業者が約100万」という状況を受け、「すべてのやる気のある若年者の職業的自立を促進し、もって、若年失業者の増加傾向を転換させること」を目的としたものです。2000年代に入って特に顕著になったリストラと企業の新規採用の抑制、採用にあたっても高度化・即戦力志向と非正規雇用の拡大という流れが就職難を生み出し、大きな社会問題化したからです。ジョブカフェ(地域におけるワンストップサービスセンターの設置)、「若年者トライアル雇用」(学卒未就学者などの若年失業者を短期間の試行雇用によって受け入れる企業に対する支援を行う)などが開始されました。
さらにその後、いわゆるニートなど働く意欲の乏しい、具体的な就職活動に至っていない者に対する施策として、「地域若者サポートステーション」が設置されました。これは若者のおかれた状況に専門的な相談を行うとともに、地域の支援機関のネットワークを構築し、効果的な活動が行えるものとして2007年に本格的展開が図られました。
 2007年には「ジョブカード制度」が始まりました。これはアルバアイトを含めた職歴、職業訓練、取得資格などを書き込むカードで、それをもとにハローワークやジョブカフェなどのキャリアコンサルタントが確認することによって交付されます。履歴書として使えるほか、自分のキャリア形成の問題点などを見つけ出すことできるものとされています。現在の自治体の事業の多くは、これらの国の事業展開に対応してはじまりました。そして、これらの経験のなかから様々工夫がなされ地域の実態に合った努力がされてきています。

劣悪な労働環境改善が急務

 このような就労支援事業が生まれる背景について、もう少しみてみます。
 1900年代から2000年代前半は、バブル崩壊以後の長期不況のなかで企業は採用を控えるようになり、いわゆる就職氷河期の時代になりました。就職できないまま卒業する学生も少なくありませんでした。新卒で就職できなかった学生は、その後、正規社員として採用される道が大きく狭められ、非正規・不安定な身分のままとなりました。また、これまでの日本の雇用は、終身雇用制度が主流であり、多くの企業は採用した学生を企業内で教育していくシステムをとっていましたが、こうしたシステムは時代遅れとされ、採用にあたっての即戦力化と職場の合理化・リストラが進められました。労働法制も改悪され、労働者の無権利化がすすめられました。新自由主義による競争・市場原理至上主義のもとでの弱肉強食、格差拡大です。
労働政策・雇用政策の上から、こうした動きの対応策として欧米の就業支援策、職業訓練政策などもかたちとしては参考にされ、国によって前述した政策が展開され始めました。競争原理のもと競争に勝ち残れなかった者への「社会的排除」が行き過ぎれば、今後の社会の在り方に大きなマイナスをもたらさざるを得ないことが目に見える形になり、「社会的包摂」のための施策を取らざるを得なくなったということができます。当たり前のことですが、無業者、非正規・不安定雇用の増大は、これからの日本の社会の在り方を大きく歪めてしまいます。税収は伸びず、社会保障制度も十分には機能しなくなります。おそらく生活保護はさらに拡大するでしょう。社会の健全性はどんどんと失われていきます。しかし、国が始めた今の就業支援策は新自由主義的政策によってもたらされた結果への対応を前提とした部分的なものでしかありません。
 若者の離職率は「七・五・三」と言われています。中学卒が約7割、高校卒が約5割、大学卒が約3割の意味です。このように就職した企業で働き続ける比率は低いものになっています。若者自身の勤労意欲やコミュニケーション能力の低下がその主な原因とされていますが、そのことももちろんあるでしょうが、非正規雇用や低賃金、劣悪な労働環境などが一向に改善されず、労働組合もなく相談に応じてくれる人もいないことと無関係ではありません。就業支援策の背景にある労働実態をみつめ、これを改善していく労働運動、政治運動の強化があわせて必要です。